自殺の道連れになる乗客…あいまいな感情とは何か(過去の痛みVol.10)
遺体が粉砕している…
ジャーマンウイングス9525便は、2015年3月24日、バルセロナを離陸した後、地中海上空を高度38,000フィートを航行中で飛行していたところ、突如急降下を開始しアルプス山中に激突した。そして乗員乗客150名全員が死亡した。
積み荷や遺体は、約2キロにわたり散乱しており、粉のようにすべてが粉砕されていた。ほぼ垂直に加速させた機体は、岩盤質の斜面に強く激突して、乗員乗客は跡形もなく粉のように消えてしまった…
副操縦士の心の闇…
事故直後、テロ説、機内油圧装置の故障による意識喪失、ソフトウェア不良などの憶測が飛んだが、ボイスレコーダーを解析すると、機長がトイレに立った際、そのまま操縦室から締め出す様子が記録されていた。そのあと垂直降下をはじめ、躊躇なく加速をしていることから、副操縦士の『自殺』と断定された。『失恋』と操縦に必要な『身体機能の維持』が今後できないことが自殺の理由という。
これがきっかけで、乗務員は操縦室内に二人以上と義務化された。
日本でも同様の事故があった…『機長やめてください!』
日本でも約40年前、自らの操縦する航空機のエンジンを着陸直前にリバース(逆噴射)させた事故がある。
日本航空350便だ。乗員乗客174人中24人が死亡し149人が負傷した。墜落後、副操縦士は機長に「キャプテン、何てことをしてくれたんですか」と怒鳴った。機長は泣き出した。機長はロシアが攻めてくるので捕虜になり虐殺されるより先に、自ら命を絶つことを考えていたという…
わたしは、この土地を単独で2020年1月に訪れ24の魂に敬意を払い黙祷をした…そして、どのあたりで第2エンジンと第3エンジンのスロットルを逆噴射へ操作したか、心でイメージしてみた…
機種の違いや機体の大きさこそ違えど、一人一人『高度』や『速度』のアプローチが微妙に違うことがわかる…改めて人間が操縦してることを意識できる。また手探りで一回一回『勝負』してることを思わせるものだ…『完璧』を要求されてる大量輸送の儚さ(はかなさ)を感じる瞬間でもある。
機体や操縦者を選べばないのはなぜか…
わたしたちは日常生活を送る中で、SLA(サービスレベルアグリーメント:)という、サービスの品質保証性の高いものを、無意識に合意して購入している。
例えば、Aという店とBという店なら、商品の『品質』や『価格』、そして『販売員』の接客などを総合的に判断して合意している。
ところが航空機や鉄道の大量輸送サービスでは、安全のコア、つまり操縦をつかさどる人間の技量や安全性については人任せの感覚があります。『航空機の機長は、立派な人物だと思う!』『鉄道の運転手は厳しい訓練を受けてるから大丈夫!』『管理する会社も厳しくチェックしてるはず!』と考えたりしませんか…
ところが実際は、一人一人、様々な環境で、様々な要因に囲まれており、企業も心の奥底まで従業員を管理することはとても難しいのが現実です。
この事故のように、必ずしも最良なコンディデョンではないのに、もう一人乗務員を増員することで自殺企図のある人間を制圧できるでしょうか…計算されつくした自殺企図者は二人の乗務員よりさらに巧妙な計算を用意します…
もしあなたが乗る飛行機を選べるならば、この情報は重要ではないですか?
1、機長は35年のベテランで飛行時間は20,000時間以上だが、搭乗する飛行機は20年前の機体
2、機長は経験5年程度でまだ不慣れな点があるが、搭乗する機体は最新鋭(最新の機体が安全とは限りません)
あいまいなサービス品質に自動操縦でお別れを…
このように人間が現在行っている大量輸送の安全性開示の項目は少なく、選択の余地はありません。単純に到着した航空機、鉄道、バス、船舶に乗車するしかありません。
本来は、操縦する人の『技量』『本体の経年劣化』『点検の回数や内容』『機体の事故歴』『操縦者の年齢や病歴、判断能力』などが表記され、レストランを選択するように、合意が形成されることが重要です。不動産で言えば『築年数』や『事故物件』なのか、中古車では『走行距離』や『事故歴ありなし』を見て判断するのと同じことです。
オートメーション文化の過渡期…
『死にたい…』と考える副操縦士の精神状態を知っていたら、誰もこの航空機には乗らなかったはず…仮に社内でこうした状況を防げる教育ができたとしても、人間の感情とは曖昧で理屈に合わない行動をとることがあります。
それ自体を教育しなおしたり、罰則を増やしたり、懲役を科して『牢屋』にいれても人間の『本質』を除去することには限界があります。がんばってその『気の迷い』や『感情の起伏』を抑え込もうとする『安定志向』こそが、オートメーション文化への誘い(いざない)でもあります。
慣習や文化、自分の感覚を見直す時期が来ています
つい最近まで企業は一か所に集まることが生産性を上げる基本要素と考えていました。COVID-19をきっかけにリモートワークでも、ある程度賄えることに、今頃気が付いたのです。それは、あいまいな『伝統』や『風習』を見直すことができなかった『証』です。
生産性を重んじる企業が、最も非生産的なことを続けていました。オフィスの家賃代は消費者に提供されるサービスに、影響を与えていたわけです。一か所に集まらないことを『社会問題』をきっかけに、気づかされたというなら、それは企業努力を単純に見落としていたのかもしれません…
セマンティックセグメンテーションで離陸実験開始…
現在就航している多くの航空機は、能力的に自動操縦が可能です。例えばエアバス社では自律技術テスト『ATTOL Airbus Autonomous Taxi, Take-offan&Landing』というプロジェクトを進行させています。
画像の認識にはセマンティックセグメンテーションの応用技術が不可欠です。
セマンティック セグメンテーション (Semantic Segmentation) は、画像内の全画素にラベルやカテゴリを関連付けをするディープラーニング (Deep Learning) のアルゴリズムです。
その物体の認識をさせる技術で、現在では医療用画像処理、自動運転、工業用検査などに利用されています。(文責 赤羽輝久)
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